南総里見八犬伝の謎(その二)修験人身御供伝説

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千葉県館山市上真倉に妙音院(安房高野山妙音院)がある。

天正年間に、安房の国の大名・里見義康公の発願により紀州高野山の直轄別院・里見家の祈願寺として開山された南房総唯一の古義(高野山)真言宗の寺である。

つまり、里見氏(さとみうじ)は真言宗との縁が強い。

妙音院も、紀州根来寺内の密教修験院の名を取った妙見信仰の証である。

その妙音院からちょうど北東(鬼門)の方角に意味深な地名がある。

南房総市の一角に旧安房郡富山町があり、その富山町の平群地区にある地名が、「犬掛」と言う、まるで八犬伝が実際にあったがごとき地名である。

【掛ける】は、古来より性交を意味する言葉である。
我が国では、四足動物を人為的に交尾繁殖させる行為を【掛ける】と言う。

この【掛ける】の語源であるが、歌垣の語源は「歌掛け」であり、夜這いも「呼ばう(声掛け)」である。

こちらは滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」の話であるが、「走る」の意味も「駆ける」であるが、当てる字が違う。

伏姫はフィクションで実在しないので、誰か女性が忌み祓いの為に犬を「掛けられた」と言う「昔話(伝承)が存在した」と解釈するのが妥当である。

そうなると、昔話の方は修験山伏の仕事と解釈するのが妥当である。

勿論「南総里見八犬伝」は滝沢馬琴の創作小説であるが、その題材の基に成った妙見信仰の伝承が在り、その伝承の地が安房の「犬掛」だったのでは無いだろうか?

しかしこの獣姦、現代の感覚で考えてはいけない。

山犬は大神(狼)であり、犬公方と言われた五代将軍・徳川綱吉により、「生類哀れみの令」が発布される時代だった。

つまり、神の子を宿す神聖な呪詛である。

しかも「八っ房」と「伏姫」との「犬掛け」はあくまでも伝承であり、現実には天狗伝説に在るように天の狗(てんのこう/てんのいぬ)=修験山伏の行者の仕業なのである。

下総国(千葉県)に在る地名「犬掛」は当主・里見義豊が叔父(父の弟実堯)の長男・里見義堯との家督相続の戦いに破れ、自刃した不吉な古戦場跡で、鬼門の方角に当る。

今以上に信心深い時代の事である。

鬼門封じの呪詛を、里見家が修験道に命じて、密かに執り行った可能性は棄てない切れ。

或いは滝沢馬琴が、その土地に密かに伝わる「人身御供伝説の噂」を参考に、作品に取り入れた可能性も棄て切れないのである。

つまり、滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」は、山犬(狼=大神)信仰と人身御供伝説を江戸時代の当世風にアレンジした小説である。

里見八犬伝のベースが陰陽修験道をモチーフにしているなら、主要登場人者・伏姫(ふせひめ)の名称にしても修験道師の別称・山伏(やまぶし)から取った山伏姫なのかも知れない。

提婆達多品(デーヴァダッタ、或いはダイバダッタ品)の観世音菩薩について、弁財天が「観世音菩薩の応変」と見なされる。

この両者(弁才天と観世音)は、「自らを犠牲に供する事によって男を救済する存在」と言う共通性を持っている。

真言宗の空海天台宗の円珍の行く所には多く弁才天の伝承が残っているそうだ。

言わば,修行を積んだ徳の或る僧も、人の子で、尊い高僧が説法の道すがら接した娘達は、生身の人間(女性)ではなく「神仏と接した」とする立場上の便宜性だったのか?

それとも、彼らは特別な秘法(呪詛)によって、村娘や町娘を浄化し、その土地の為に、新たに「生きた弁天菩薩」を作り出したのかも知れないが、真相は判らない。

弁財天はその原型であるインド土着の女神・サラスヴァティーの頃から、性の女神としての側面をもっていた様で、そのイメージは日本に入ってきてからも健在だった。

なかでも江の島弁財天は裸形弁財天で有名で、江の島の本宮とされる洞窟は弁財天信仰が持ち込まれる以前から、女性の性器や子宮に見たてられ「女陰信仰が盛んだった」と言う。

この辺りの下地が、「交わりによって相手を浄化する」と言うイメージを喚起したのかも知れない。

その根底にあったのが、「民族の血の同化」と言う国家プロジェクトと言う事になる。

サンスクリット語でサラスヴァティーとは水(湖)を持つものの意であり、水と豊穣の女神 インドのもっとも古い聖典リグ・ベーダに於いて、始めは聖なる川、サラスヴァティー川(その実体については諸説ある)の神話である。

その神話で、八歳の娑竭羅龍(サラスヴァティー)王の娘が「男子に変じて成仏した」と言う内容の「提婆達多(デーヴァダッタ)品」が〈つまり女でも、子供(八歳)でも獣(竜)でも成仏できる事を説いた経文〉として論じられる事が多い事からして、竜は獣と言う扱いらしい。

獣も仏法諸天の仲間で有り、獣(竜)でも成仏できるのなら、畜生道(獣姦)に落ちても成仏できる理屈である。

滝沢馬琴の里見八犬伝の「八」は、日本古来の信仰から「八」を導いている。
八犬伝(八剣士)であり、犬の名は八房である。

日本の神話のキーワードは「八」と言う数字である。
また、犬に関わる人身御供伝説は、日本全国に数多く存在する。

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詳しくは【天狗修験道と犬神・人身御供伝説】に飛ぶ。

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by mmcjiyodan | 2009-03-29 03:53 | Comments(0)  

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