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満州事変(まんしゅうじへん)〔二〕

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千九百三十一年(昭和六年)七月、万宝山事件が起こっている。

万宝山事件は、長春の北、三姓堡万宝山集落の農業用水をめぐる朝鮮人農民と中国人農民との対立に端を発しており、ここに水路を造ろうとした朝鮮人と、それに反対する中国人が衝突した事に起因する。

韓国併合後、困窮化した朝鮮半島の農民は、多く日本や満州に流入したが、朝鮮総督府は朝鮮人の日本への渡航を厳重に取り締まった一方で、満州への移住は従来通りとした為、在満朝鮮人が急増し、在満朝鮮人と中国人の関係は紛争の火種となった。

中国人農民に中国側の警察官、朝鮮人には日本領事館がそれぞれ支援にまわったが、中国人農民が実力で水路を破壊、日本人警官隊と衝突する事態へと発展した。

発砲事件も起こったが、幸い双方どちらも死傷者は出なかった。

しかし、事件の詳細が誤って伝えられると、朝鮮半島各地で中国人への報復(朝鮮排華事件)が多数発生し、百人以上の中国人が殺害されて日中間の緊張を高めた。

このニつの事件は、日本国民に「満蒙の危機」を強く意識させた。

そして、満蒙に於ける日本と中国との対立は一触即発の状態になっていた。

国民は、軍部とそれに迎合したメディアに見事に操られていた。

まぁ、メディアも楽に取材できるから当局とは癒着し、結果当局に都合が良い報道が為される事になる。

貧しい民としては、植民地が増えれば、「やがて豊かに成る」と海外の富の収奪に望みを託し、「国益」と言えば何でも通る様な風潮の時代だった。

この謀略について、果たして関東軍司令部とその参謀達が純粋に「国益」を想って始めた事だろうか?

或いは自らの「野望」や「財閥との癒着の果て」に、将兵を巻き込んで始めた事なのか、多分に怪しいものである。

更に、第二次若槻内閣の幣原喜重郎外相による国際協調路線に立つ外交(幣原外交)は「軟弱外交」と形容され、国民の間では、こうした手法では満蒙問題を十分に解決できないという不満が強まっていた。

柳条湖事件は満州事変へと拡大し、若槻内閣による不拡大方針の声明が在ったにも関わらず関東軍はこれを無視して戦線を拡大する。

関東軍は千九百三十一年(昭和六年)十一月から翌千九百三十二年(昭和七年)二月までにチチハル・錦州・ハルビンなど満州各地を占領した。

一方の中華民国は、これを日本の侵略であるとして国際連盟に提訴した。

列国は、当初、事変をごく局所的なものとみて楽観視していたが、日本政府の不拡大方針が遵守されない事態に次第に不信感をつのらせていった。

千九百三十二年一月に関東軍が張学良による仮政府が置かれていた錦州を占領すると、アメリカ合衆国は日本の行動は自衛権の範囲を超えているとして、パリ不戦条約および九か国条約に違反した既成事実は認められないとして日本を非難した。

当時の国際連盟加盟国の多くは、「満洲地域は中華民国の主権下にあるべき」とする中華民国の立場を支持して日本政府を非難した。

国際連盟は、千九百三十一年(昭和六年)十二月十日の連盟理事会決議によって、千九百三十二年三月、満州問題調査の為にイギリスのリットン卿(ヴィクター・ブルワー=リットン)を現地に派遣した。

リットン調査団の調査は三ヵ月に及んで同年六月に完了、同年九月には調査の結果をリットン報告書として提出した。

その間、若槻内閣は閣内不一致で千九百三十一年十二月に退陣、替わって立憲政友会の犬養毅が内閣を組織した。

関東軍は満州より張学良政権を排除し、千九百三十二年(昭和七年)三月には清朝最後の皇帝(宣統帝)であった愛新覚羅溥儀(あいしんかくらふぎ)を執政にすえて「満州国」の建国を宣言した。

犬養内閣は満州国の承認には応じない構えをみせていたが、千九百三十二年五月の五・一五事件では犬養首相が暗殺される。

海軍軍人の斉藤実に首相の大命が下ると斎藤内閣は政党勢力に協力を要請して挙国一致内閣を標榜する。

しかし軍部の圧力と世論の突きあげによって満州国承認に傾き、千九百三十二年九月には日満議定書を結んで満州国を承認した。

関東軍は僅(わず)か五ヶ月の間に満州全土を占領し、軍事的にはまれに見る成功を収めた。

この軍事衝突を境に、中国東北部を占領する関東軍と現地の抗日運動との衝突が徐々に激化した。

満洲国の建国により中国市場に関心を持つアメリカら他の列強との対立も深刻化した。

所謂(いわゆる)十五年戦争(中国での名称は、十四年抗日戦争)の発端は、この満州事変を基点としている。

千九百三十三年三月二十七日、日本は国際連盟脱退する。

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関連小論・【張作霖爆殺事件・柳条湖事件の陰謀】を参照下さい。

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by mmcjiyodan | 2012-08-13 03:19  

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