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安土城天守閣の謎

昔から、権力を手中にした者が手始めにする事は決まっている。

必ず権力の誇示を象徴する建造物を建てるからである。

織田信長(おだのぶなが)の場合、それが千五百七十六年(天正四年)丹羽長秀を普請奉行に命じて築城の「安土城」だった。

着々と天下統一を進めていた織田信長は、京に近い琵琶湖に面した安土の山稜の地に天下統一事業「天下布武」を象徴する居城を作る事を丹羽長秀にを命じた。

滋賀県蒲生郡安土町下豊浦に、織田信長最盛期の居城安土城跡はある。

当時の安土山は琵琶湖に突き出た岬状の地形だった。

長篠の戦い」に於いて武田軍を破った翌年の築城で、その数年前には、ほぼ信長の天下取り「天下布武(てんかふぶ)」は決定的だったのである。

三年後に完成した山城は、五層七重の天主閣を抱く眩(まばゆ)いばかりの城郭群だった。

五層七重とは、つまり外観は五層だが内部は地下一階地上六階の七重造りの天守閣である。

安土城本丸は都の帝御所を模した御所造りで、信長の並々ならない野望の一端が伺える。

信長の居城・安土城を見たイエズス会の宣教師=フランシスコ・ザビエルは、故郷への手紙に「ヨーロッパにもこれほどの城は存在しない」と、書き送っている。

この「安土城」、世にも絢爛豪華(けんらんごうか)な和洋折衷(わようせっちゅう)風の建物で、信長にとっては皇帝の居城だった。

折衷(せっちゅう)風にしたのは、世界に通ずる皇帝の心意気を示し、征服王・織田信長の尊敬の神話はこれから創造すれば良いのである。

安土城の天守閣五階には仏教の世界観が金箔と朱漆塗りを背景に、釈迦説法図などが絢爛豪華に描かれていた。

その上の天守閣六階(最上階)は吹き抜けになっており、当時の最高の技術と芸術で織田信長の壮大な宇宙観が凝縮して創り上げられ、信長しか入った事がなかった空間がある。

最上階の吹き抜けについては、防火対策上「城郭建築に於いては考えられない」と異論を唱える学者の意見もあるが、天下人たらんとする信長には自らの居城が「炎上する事には成らない」と言う絶対の自信が有ったのではないだろうか?

普請された安土城は、今までの武人常識からすれば防御には向かない造りだった。

普請奉行・丹羽長秀の進言を排してまで拘った無防備承知の上での設計であれば、信長の自信が過信に変わったのだろうか?

嫌、そうではない。

神の意向で統治する帝の御所は、まるで無防備でも建前攻める者はこの国には居ない。

恐らく織田信長は、織田帝国の絶対武神として己の神格化を狙ったに違いない。

織田信長ほどの男である。

ただ豪華なだけの築城などする訳が無い。

朝廷が驚愕して皇位簒奪を恐れる、織田信長自身が自らを「神である」とする何かが、そこに祀られていた。

つまり天守閣六階(最上階)は、織田信長が神をも恐れぬ恐ろしい男なのか、神仏をでっち上げて既得権で甘い汁を吸っている当時の宗教関係者が怪しいのかの、そのせめぎ合いの象徴だった。

織田信長の織田一族の先祖の地は、越前国(福井県)丹生郡織田町(織田の庄)で、織田神社(剱神社)の神官(神主)が出自である。

土地の氏神が民を守る事と土地の氏上(うじがみ)が土地と民を守る事は、その到達の意味合いが重なっている。

氏族が先祖を神に祭り上げる事は、子孫である自分達の権力の正統化に繋がる事であるから奇跡現象などの労はいとわなかった筈で、純朴な民がそれを信じても仕方が無い。

その辺りの歴史的経緯を承知しているからこそ、信長には祖先がした事を真似ているだけの意識しかなく、安土城天守閣に自分を神とする神座(かみくら・かぐら)を設けて居たのである。


信長が生涯に普請した城の数は、小牧山城(尾張国/愛知県小牧市)、鶴ヶ城(つるがじょう・美濃国/岐阜県瑞浪市)、小里城山城(おりじょう・美濃国/岐阜県瑞浪市)、安土城(あづちじょう・近江国/滋賀県近江八幡市)の僅かに四つで、天下取りのベースとした安土城(あづちじょう)が最後の築城だった。

本拠地として使ったのは、父親から譲り受けた那古野城、本家筋の織田大和守家から乗っ取った清洲城、美濃攻めの為に築城して移り住んだ小牧山城、美濃攻略成功して尾張・美濃を治める為に改修して移った岐阜城(稲葉山城)、そして天下を治める為に築城した安土城がある。

明神(みょうじん)と信長の熱田神宮】に続く。

この安土城天守閣の存在が、明智光秀の「本能寺の変に繋がっても、不思議がない」と想像できるのである。

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