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タウンゼント・ハリスと唐人お吉(斉藤きち)

タウンゼント・ハリスは初代の米国総領事として日本に来航、日米修好通商条約を結んだ人物である。

マシュー・ペリー提督の黒船来航で攘夷か開国かの窮地に立たされた江戸幕府は、とりあえず初代の米国総領事としてタウンゼント・ハリスを受け入れて伊豆の国(いずのくに)・下田(玉泉寺)に領事館を許し常駐させる。

ハリスは江戸出府を望むが、幕閣では水戸藩の徳川斉昭ら攘夷論者が反対し、幕府としてはこのハリスには江戸やその近くに来ては欲しくなかった為江戸出府は留保された。

結局開国派の大老・井伊直弼が京都の朝廷の勅許無しでの通商条約締結に踏み切り、幕府は条約を締結するのだが、幕府はハリスの江戸出府を引き止めさせる為、総領事のタウンゼント・ハリスと通弁官(通訳)のヘンリー・ヒュースケンに対して夜伽侍女の手配を行う。

斉藤きちは、数え十七歳の時に下田奉行所支配頭取・伊差新次郎に口説かれてハリスに献上される。

日本史に於いては、基本的に婚姻関係が神代から続く「誓約(うけい)の概念」をその基本と為していて、氏族社会(貴族・武家)では正妻・妾妻と言う変形多重婚社会の上、家門を守り隆盛に導く手段として「政略婚」や父親や夫からの「献上婚」などが当たり前であり、おまけに主従関係を明確にする衆道(男色)も普通の習俗で、日本側にすれば他国の高級役人に夜伽女性を献上するのは当然の行為だった。

所が、敬虔(けいけん)なクリスチャンで米国帰国後も生涯独身であったハリスはその事に驚き、直ぐにお吉は解雇されている。

こんな生涯独身と言う宗教価値観の男などは、その出現を多数許しては人類が滅亡してしまうので堪ったものではない。

この時のタウンゼント・ハリスが請けたカルチャーショックの衝撃が、民衆の生活を見聞し日本の性規範の大らかさに驚き「軽蔑した」と言う日本の性文化批判の根幹を成す出来事だった。

言わせてもらえば、このハリスの日本文化批判は個人の思考に拠る極めて独善的なものである。

ヨーロッパで起こった大帝国が、様々なローマ神を奉る万神殿・パンテオンに代表される多神教のローマ帝国で、それが快楽と堕落に溺れて滅亡した反省から生み出されたのがキリスト教であるから、キリストの教義が禁欲的で在っても仕方が無い。

しかしローマ帝国が世界的な大帝国で在り得たのも、様々な人種と信仰を受け入れた多神教国家だったからであるし、後に東アジアから起こった世界的な大帝国・モンゴル帝国も、あらゆる人種を政治や軍の高官に登用し、様々な信仰を受け入れた多神教国家だった。

つまり、人種的帰属意識や単一神信仰を前面に出せば、それは「世界規模の共存」とは相反する行為であり、その事が日本の黎明期に起こった誓約神話に拠る異民族(異部族)融合に通じるものがあるのだ。

まぁ、キリスト教はローマ帝国の腐敗や堕落の反省から生まれた信仰だから禁欲的教えでも仕方が無いが、キリスト教徒の中にはフーリングが合えば「神の思(おぼ)し召し」で浮気不倫をする者も居る。

そしてそれが間違いなら、「懺悔(ざんげ)」をすれば赦される仕組みになっている。

キリスト教徒と言えども人間だから、時には悪魔に惑わされる事も有る訳である。

浮気不倫は存在し、勿論、合法非合法の別は国に拠って様々だが、現実に「売春・買春」もキリスト社会に存在する。

何だ「性に対する柔軟性は一緒じゃないか」と思うだろうが、実は大きな違いがある。

ここでキリスト教徒が日本の性規範(性意識)を批判したかった決定的な違いは、キリスト教徒の場合は「フーリングが合えば」と言う「個の感性」が基本と言う点である。

その「個の感性」を基本とする欧米個人主義に比べ、一方日本の明治維新当時のおおらかな性習俗は、「寝宿制度」、「夜這い制度」、「暗闇祭り」と、言わば群れ社会の性規範、「集団婚(群れ婚)」の名残である集団的性規範を、「民族性の違い」にも関わらず自分達の感覚と比べ「信じられない」と批判したのである。

しかしこの話し、ハリスばかりを責められない。

日本人が、近隣諸国の人々と考えが違う事で馬鹿にしたり、同じ理由で近隣諸国の人々が日本人を馬鹿にしたりと互いに愚かな判断をしている。

斉藤きち(唐人お吉)が仕えた期間はほんの僅かで、ハリスの敬虔(けいけん)な信仰から夜伽行為は実行されず、きち(唐人お吉)の身は綺麗なままだったが、周囲は異人に身を汚された女性として「唐人」とののしられ、下田に居られなくなって横浜に流れ、後に戻って来て小料理屋「安直楼」を開くが、周囲の心無い仕打ちに酒に溺れて店を倒産させ、豪雨の夜に川へ身を投げて遂に自らの命を絶ってしまう。

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by mmcjiyodan | 2008-12-20 19:36  

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