阿倍比羅夫(あべのひらふ)(二)
日本書紀によれば、阿倍比羅夫(あべのひらふ)は六百五十八年に水軍百八十隻を率いて日本列島東北部の蝦夷を討ち、さらに「粛慎(ミセハシ)」を平らげた。
粛慎(ミセハシ)は本来満州東部に住むツングース系民族を指すが、日本書紀がどの様な意味でこの語を使用しているのか不明である。
実は北東アジア大陸の諸族をツングース系民族と言うのだが、ツングース系民族は地形上ロシア人との交易も盛んで、民族事情を良く知らない第三者にはロシア人をツングース系民族と混同する可能性も在り、日本書紀の中の粛慎(ミセハシ)の記述が中国文献中の粛慎(しゅくしん)と同じものであるとは言い切れない。
それにしても、この阿倍比羅夫(あべのひらふ)の東北進攻は六百三十年(奈良時代)頃の白村江(はくすきのえ)の戦いと時期が一致していて、時期としては大いに違和感を感じる。
半島で百済と新羅とが戦火を交え、大和朝廷も百済に援軍を送っている時にしては、よくも大軍を「奥州に派遣できた」と、若干の疑問も残る。
東北蝦夷統一王の安倍氏の歴史を大和朝廷の成果として後世に伝える為に、時代をずらして日本書紀に組み込んだ可能性もある。
または、阿倍比羅夫(越国・えつのくに)はまだまったく別の勢力(部族国家)として独立していて、別行動を取っていたのだが、後に大和朝廷に合流して「朝廷の歴史として後で組み込まれた」と、考え得るのかも知れない。
阿倍比羅夫(越国・えつのくに)が大和朝廷(やまと王権)とは別の勢力(部族国家)であれば、後の桓武天皇が命じて行なわれた七百八十年代後半の征夷将軍・紀古佐美(きのこさみ)の東北派兵派兵やその後七百九十年代始めの征夷大使・大伴弟麻呂、征夷副使・坂上田村麻呂(さかのうえたむらまろ)の蝦夷征伐が符合する。
また相当時代が下がった千五十年代に起こる奥州(東北)鎮守府将軍・源頼義(みなもとよりよし)と蝦夷(えみし)・俘囚長・安倍氏・安倍貞任(あべのさだとう)らとの前九年の役(ぜんくねんのえき)とも出来事に符合して来るのである。
現在の秋田県の雄物川の河口のアギタ浦(いまの秋田市) に着いた時、アギタ蝦夷の首長の恩荷(オガ)は安倍比羅夫に恭順した。
阿倍比羅夫はこの恩荷に「小乙上(しょうおつじょう)」と言う、六百四十九年(大化五年・奈良時代)施行の「冠位十九階中十七位」の官位を与えている。
しかしこの辺りの日本書紀の記述は、阿倍比羅夫(越国・えつのくに)独立説とは矛盾するが、日本書紀が編纂されたのは比羅夫が活躍した時代から百五十年も後の事で、この「官位を与えた」は辻褄合わせの可能性が高い。
その後、阿倍比羅夫は更に北ヘ行き、ヌシロ(能代) ツガル(津軽)の蝦夷の頭領を郡領(コオリノミヤッコ)に任命している。
そして、有間浜(岩木川の河口?)に渡島(今の北海道?)の蝦夷を集めて懐柔の饗応をしている。
更に、肉入籠(シシリコ)に至って 後方羊蹄(シリベシ)に郡領(コオリノミヤッコ)を置いた。
同年七月には、二百余人の蝦夷が飛鳥の朝廷に朝貢(ちょうこう)に来ている。
その後、六百六十年(斉明六年)三月には、阿倍比羅夫は二百艘の大船団を引き連れて第二次遠征に出発している。
阿倍比羅夫がある大河の河口に来ると、渡島(ワタリシマ・北海道?)の蝦夷が千人ほど集まっており、この中から二人の 蝦夷が走り出してきて、ここに突然粛慎(ミセハシ)の船が襲ってきたので「助けて欲しい」と安倍比羅夫に懇願した。
そうこうする内に粛慎(ミセハシ)が比羅夫を攻撃して来たので、両軍は矛を交える事になった。
これには征服をしに来た比羅夫に助けを求めるなど、記述内容に矛盾がある。
だとすると、推測するに比羅夫本人が蝦夷の王だからこそ比羅夫に助けを求めたのではないのか?
比羅夫は戦闘の末、粛慎(ミセハシ)の内四十九名を捕足したが、比羅夫の側にも能登臣・馬身竜が戦死している。
面白い事に、メラニン色素の割合で言っても「秋田美人」に喩えられる秋田の人の白人のような肌の白さは東北の中でも群を抜く結果となっていて、秋田県を中心とする東北の一部に明らかに白人との混血種日本人が多く存在してる事も知られている。
或いはそれらが、有史以前に日本列島に到達していた粛慎(ミセハシ)と呼ぶ実は欧州系の白人種(ロシア人)だったのかも知れない。
この粛慎(ミセハシ)と言う部族は少なくともこの 地方(奥州・渡島)に住んでいる蝦夷とは違った種族だった。
彼ら捕虜は生きた熊二頭と熊の皮七十枚と一緒に朝廷に戦利品として献上されている。
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