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望月氏(もちずきうじ/古代豪族・滋野氏流)(一)

さて、信濃国から甲斐国、駿河国にかけて望月氏と言う姓を多く見かける。

それらの望月氏は信濃望月氏と言い、古代豪族・滋野氏の流れを引く望月村の土着の豪族・望月氏の一部が各地に移住して広めた名前である。

そもそもの望月氏名乗りの由来は、八百六十五年(貞観七年)の平安時代初期、それまで朝廷が八月二十九日に行っていた信濃国の貢馬の「駒牽」の儀式を、満月(望月)の日=八月十五日に改めた事に由来する。

この日に駒牽された貢馬を「望月の駒」と呼び、朝廷への貢馬の数が最も多かったのが信濃御牧の牧監とも伝えられる滋野氏(しげのうじ)であり、信濃十六牧の筆頭「望月の駒」を継承した一族に因(ちな)んで望月の姓が与えられた。

滋野氏(しげのうじ)とは、清和天皇の第四皇子・貞保親王(さだやすしんのう、陽成天皇の同腹の弟)がその家祖とされるが、「尊卑分脈」には記載されておらず、その真偽は「多分に怪しい」との指摘もある。

清和天皇の第二皇子・貞固親王(さだかたしんのう)や貞秀親王を祖とする説や滋野東人・楢原氏(ならばらうじ/紀氏)系滋野氏説、大伴氏末流説など在り滋野氏(しげのうじ)の出自は定かではない。

指摘を承知で一応ご紹介するが、滋野氏(しげのうじ)は貞保親王(さだやすしんのう)が信濃国海野庄(現:長野県東御市本海野)に住し、その孫の信濃国小県郡に本拠を置いた善淵王(よしぶちおう)が九百五年(延喜五年)に醍醐天皇より滋野姓を下賜(滋野善淵)された事に始まる皇別氏族である。

皇別氏族の真贋はともかくこの滋野氏(しげのうじ)が古代の名族で在る事に疑いは無く、枝に海野氏や望月氏・禰津氏(ねずうじ)などの諸族が在り、海野氏流には戦国期から江戸期の大名家となる真田氏の名も在る。

信濃望月氏の全盛期は、平安末期の千百八十年(治承四年)の木曾義仲(源義仲)挙兵に子の望月重隆とともに従軍した望月国親の時代と考えられ、当時の望月氏は佐久郡から隣接する小県郡にも勢力を伸ばしていたとされる。

木曾義仲が越後の平家方を迎撃した千百八十二年(寿永元年)九月の横田河原の戦いでは、木曾衆と甲斐衆(これは上州衆の誤記と思われる)と共に佐久衆が中核となったとする記録がある。

この佐久衆の中心が、古来より日本一の牧とも言われる「望月の牧」で育んだ強力な騎馬軍団を擁する望月氏であったと想定され、また、義仲の四天王と評された根井光親も望月氏の傍流と伝えられている。

義仲が一旦は平家方を都から追い落とすも、源頼朝(みなもとよりとも)の命を受けた鎌倉方総大将・源範頼(みなもとのりより)の軍勢が源義経(みなもとよしつね)軍を擁して上洛し、義仲は敗走して琵琶湖畔の粟津で討ち死にする。

木曾義仲滅亡後の信濃望月氏は、鎌倉幕府御家人となり、望月重隆は鶴岡八幡宮弓初めの射手に選ばれるほどの弓の名手として知られた。

その後信濃望月氏は、千百八十八年(文治四年)の奥州藤原征伐に従い、六年後(建久五年)の安田義定・義資父子の謀反を幕命により追討している。

さらに、北条執権家の粛清が吹き荒れた千二百十三年(建保元年)和田合戦に際しても和田軍と戦い、重隆の孫・望月盛重は和田義氏の子・次郎太郎義光を討ち、信濃国和田を恩賞として賜っている。

後醍醐天皇が起こした元弘の乱(げんこうのらん)に拠って鎌倉幕府が滅亡した後の中先代の乱では、望月重信が諏訪氏や海野氏・根津氏と共に北条高時の遺児北条時行を擁して挙兵、足利側の信濃守護小笠原貞宗の攻撃を受け本拠地の望月城(現佐久市/旧北佐久郡望月町)を喪うが、間もなく同城を再建し勢力を維持した。

続く南北朝の争いでは信濃望月氏一族の多くが南朝に与して戦い、後醍醐天皇の皇子で「信濃宮」と呼ばれた宗良親王(むねながしんのう)を三十年に渡って庇護した伊那郡の豪族・香坂高宗も信濃望月氏の一族とされる。

望月氏(もちずきうじ/古代豪族・滋野氏流)(二)】に続く。

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by mmcjiyodan | 2011-02-01 00:34  

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