浦島・竜宮伝説(うらしま・りゅうぐうでんせつ)
また、竜宮伝説(りゅうぐうでんせつ)は、海幸彦・山幸彦伝説(うみさちひこ・やまさちひこでんせつ)と深い関わりが在ると定説化されている。
何故なら竜宮(りゅうぐう)は、地域や伝承によっては海幸彦・山幸彦伝説に於ける海の神・豊玉彦(ワタツミ/綿津見=海幸彦)や海の龍神の住む所といわれている。
なお、日本各所の昔話や伝説に浦島・竜宮伝説が登場し、この物語の伝承地は必ずしも海辺に限らない。
一番一般的な浦島・竜宮伝説の粗筋(あらすじ)として、漁師の浦島太郎は、子供達が亀を虐(いじめ)ている所に遭遇する。
浦島太郎が亀を助けると、亀は礼として太郎を竜宮城(蓬莱山/ほうらいさん=とこよのくに)に連れて行く。
竜宮=蓬莱山(とこよのくに)は、古代中国に於いて理想郷とされた感性上の聖域で、日本列島に伝承されたものである。
竜宮城(中文ではロンゴンチャーン)では、一説には東海竜王の娘:竜女とも解される「乙姫」が浦島太郎を歓待する。
これは注釈だが、古代中華帝国に於いて竜宮城の「竜」は皇帝の象徴で、その宮城は「皇帝の居城を意味する」との解釈も出来る。
実はこの竜宮=蓬莱山(とこよのくに)の伝承の根幹を為す内容と秦始皇帝(しんのしこうてい/チンシーホワンディ)が関わる「徐福(じょふく/スィフゥ)伝説」が、微妙にリンクしている。
秦始皇帝(しんのしこうてい)は不老不死を求めて方士を重用し、秦(はた)氏の祖とされる徐福(スィフゥ/じょふく)に対して「東方に在る」と言う蓬莱国(日本を指すと解される)へに向い「仙人を連れて来るように」と命じた。
徐福(スィフゥ/じょふく)は船団を率いて東方に航海を進め、豊かな四季に彩られた列島を発見、その列島の王となる野心を抱いて秦帝国への帰国を反故にする。
この列島の王となる野心については、一度秦帝国へ帰国後、徐福(スィフゥ/じょふく)は万全の用意を整えて再度渡航した説も存在する。
徐福に関する伝承は日本各地に残されているが、或いは日本各地を巡った末に、最終上陸地点が紀州熊野かも知れない。
であるなら、竜宮伝説が日本各地に残されていても納得が行く。
只、伊豆諸島・八丈島に上陸して後、名も無かった三宅島に一時本拠地を構えた事から島に宮家島=三宅島の名が残り、伊豆半島に上陸して「賀茂葛城王朝を建てた」とする説がある。
大王家(おおきみけ/大国主/天皇)に対して臣下の礼をとる地方豪族・臣王(おみおう)は初期に国主(くにぬし)または国造(くにのみやっこ)・県主(あがたぬし)とされる地方の「王」で、葛城氏(賀茂氏)も臣王(おみおう)だった。
この宮家島=三宅島が、竜宮伝説の多くの「竜宮の地」の中の一つに当たるのかも知れない。
竜宮城(蓬莱山)で乙姫に歓待された浦島太郎だったが、数日もすると里心が大きくなって帰宅願望が募って行く。
しばらくして浦島太郎が帰る意思を伝えると、乙姫は「決して開けてはならない」としつつ玉手箱を渡す。
浦島太郎が亀に連れられ故郷の浜に帰ると、故郷の村には太郎が知っている人は誰もいない。
孤独感の絶望のあまり浦島太郎が、乙姫から手渡され開ける事を禁じられていた玉手箱を開けると、中から煙が発生し、煙を浴びた太郎は老人の姿に変化する。
浦島太郎が竜宮城で過ごした日々は数日だったが、地上では随分長い年月が経っていた事になる。
これこそが、徐福(じょふく/スィフゥ)伝説の「不老不死」と竜宮城(蓬莱山)の伝承が結び付いた末の物語の結末である。
「日本書紀」が完成した七百二十年(養老四年)頃までには、既にこの浦島の話が諸々の書に収録されていた。
「日本書紀」は、天武大王(てんむおおきみ/第四十代天皇)の皇子・舎人(とねり)親王を中心に奈良時代に成立した日本の歴史書である。
なお、老人と成った浦島太郎のその後については文献や地方によって諸説あり、定説と呼ぶべきものはない。
詳しくは、小論【山幸彦・海幸彦(やまさちひこ・うみさちひこ)と浦島・竜宮伝説】を参照下さい。
【日本の伝説リスト】に転載文章です。
◆神話で無い、リアルな初期日本人の成り立ちについては、【日本人の祖先は何処から来たのか?】を参照下さい。
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