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白拍子(しらびょうし)

この平安末期の頃から、後白河法皇の庇護(ひご)と贔屓(ひいき)を得て、高級遊女「白拍子」が皇族、貴族社会で活躍する。

飛鳥期神前娼婦(巫女)も簡単な情報収集の使命も負って居て、現代風に言えばハニートラップ(性を武器にする女スパイ)だった。

何故なら、神社側は旧支配者が土着した郷士の末裔であり、貴人・官人は現支配者として赴任して来た相手で、御機嫌取りと腹の内を探る必要が在った。

その神前娼婦(巫女)の進化形ハニートラップ(性を武器にする女スパイ)が、「白拍子」だった。

日本は平和ボケしているからハニートラップ(性を武器にする女スパイ)など夢物語だが、現在でも世界中で採用されている最も有効な手段である。

その流行(はやり)は瞬く間に殿上人の間に広がり、平清盛(たいらのきよもり)も例外でなく祗王と仏御前の二人の白拍子を、女間諜とは知らずに妾にしている。

近頃やたらと「品格」が問題になる。
しかしこの「品格」、権力者が求めるのは一般民衆に対してだけで、自分達の事は「棚上げ」である。

どうやら「特権階級」は文字通り特別らしく、白拍子遊びは、高級料亭の「芸奴遊び」に代って、料亭政治は昭和の中頃まで続いた。

もっとも勤皇の志士も、倒幕の密談場所は「似た様なものだった」そうだから、正に「政局は夜創られる」と言う事らしい。

この「白拍子」、実は急造の組織ではない。

密教陰陽道の修験呪術「歓喜法」の呪詛巫女として、勘解由小路党が手塩にかけて育成された美しい娘達だった。

それ故に神に対する知識は豊富で、男装の神楽舞と殿方相手の性技は年季が入っている。

この白拍子を、現代の感覚で単なる娼婦と誤解してはこまる。

男性にとっての付加価値観は、「高嶺の花を抱く」であり、性技や芸技の修行は基より知性と教養をも修めた女性が始めて白拍子に成れた。

白拍子には諜報機関の女性諜報員としての側面も在ったから、時の為政者も納得するほどの知性と教養を兼ね備えて下手な不勉強者よりも「充分に論議のお相手が出来た」と伝えられている。

後の世の花魁(おいらん)も然りだったが、その遊び女としての価値観は美貌と美しい姿態に加えて知性と教養を兼ね備えた女性と遊ぶ事であり、格式が高い点ではまさに高級娼婦だった。

定説では、遊女の原型は飛鳥期頃から始まって「神社の巫女が官人(高級貴族役人)を接待した事」に由来し、平安期の白拍子も「神社の巫女から発祥した」とされる。

何処までが本気で何処までが方便かはその時代の人々に聞いて見なければ判らないが、五穀豊穣や子孫繁栄の願いを込める名目の呪詛(じゅそ)として、巫女の神前性交行事が神殿で執り行われていた。

実は、神社を司る氏神(うじがみ)は氏上(うじがみ)で、氏神主(うじがみぬし)も氏上主(うじがみぬし)も国造(くにのみやっこ)県主(あがたぬし)の系図(天孫族)を持ち、つまり神主(かんぬし)は氏族の棟梁の兼業であるから、官人(高級貴族役人)接待は身分保身や出世栄達の為に大事な勤めだった。

古墳期から平安期にかけて中央政府の大和朝廷(ヤマト王権)から地方に派遣され赴任が解けた後も土着した氏姓(うじかばね)身分鎮守氏上(うじかみ=氏神)は、その地方の有姓(百姓)・有力者となり一定の勢力を持つ。

そこへ中央政府の大和朝廷(ヤマト王権)から新たな官人(役人)が地方に派遣され、赴任して来てその地方の有姓(百姓)・有力者と権力の二重構造が発生した時、対立するか懐柔策を採るかの地方有力者の選択肢の中で、鎮守氏神を祀る巫女に拠る官人接待は始まった。

その白拍子は源義経の愛妾・静御前で有名で、白拍子の為す遊芸も元は「神事音楽の巫術から」とされている。

その背景に在ったのは、正に巫女のシャーマニズムと性交呪詛が「誓約神話(うけいしんわ)」の古代信仰文化として深く関わっていた事に他ならない。

元々神道のお祀り(祭り)の意味の内には、異民族(異部族)和合五穀豊穣の豊年祈願などの呪詛目的を含んでいる。

いずれにしても、巫女は神事としてお祀り(祭り/性交呪詛)に拠る神懸り(かみがかり/神霊降臨)の依り代(よりしろ/憑り代)を役目として負っていた。
そこから派生して、巫女が官人を接待する風習が出来上がって遊女の原型が生まれて行ったのではないだろうか?

男の武術と同様な位に、殿方を喜ばせる目的での女の閨房術(けいぼうじゅつ・床技・とこわざ)は、大事な生きる為の女の武器(能力)だった。

一般の女性でもその心得を持たされる時代だったから、遊女(あそびめ)の白拍子は、それなりの高度な修行を積んでいた。

大体に置いて、静御前(しずかごぜん)の鎌倉での舞は、最近の映像で再現される様な優雅な舞ではない。

そもそも白拍子が舞う今様は、男舞を女性が舞う仕掛けの動きの激しいものだった。

それを袴の着用を許されない私奴婢身分の白拍子が激しく舞うのだから、裾が少し乱れる所では収まらず、しかも無防備に今日の様な現代下着は着用していない。

記述した様に、有物扱いの私奴婢(しぬひ)の出身で、身分が低い白拍子が、身分の高い者が着用する袴の着用は赦されない。

身分の低い者の男装をして「男舞」を舞踊る所に、その真髄がある。

この狙いが、当時貴族社会で「白拍子」が流行った、真実の所以(ゆえん)である。

これ以上は露骨な表現を控えるが、膝を上げたり、腰をかがめて中腰に成ったりする「男舞」を舞い踊となれば、その情景はおのずと想像が着く。

その辺りをうやむやにするから、源義経の愛妾・静御前が御家人衆やその女房達の前で舞を強制させられた位で、「大げさなエピソードを」となる。

しかしそうした真実は、情緒的な理由で綺麗事に脚色されて今日に伝わっている。

最もこの名場面、裸身を伴うから史実通りにはドラマで再現し難い事情がある。

それで、静御前の屈辱的心理が表現し難いものになってしまった。

もっとも映像化出来ないものは沢山在り、日本の既婚女性の化粧習慣だった「お歯黒」は、「映像化には不気味だ」として時代考証の段階で外され再現はしない。

しかしそれが長く続くと後世に残る映像には「お歯黒」を施粧した女性の登場場面は無くなり、やがて記憶から忘れ去られる事だろう。

遊女関連の詳しくは【遊女(女郎)の歴史】に飛ぶ。

性文化史関係リスト】をご利用下さい。

◆世界に誇るべき、二千年に及ぶ日本の農・魚民の性文化(共生村社会/きょうせいむらしゃかい)の「共生主義」は、地球を救う平和の知恵である。

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by mmcjiyodan | 2008-04-28 22:42  

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