西郷隆盛(さいごうたかもり)
また西郷隆盛(さいごうたかもり)は、「維新の十傑」に数えられる人物でもある。
千八百二十八年(文政十年)鹿児島城下の下加治屋町山之口馬場で、御勘定方小頭の西郷九郎隆盛(のち吉兵衛隆盛に改名、禄四十七石余)の第一子として生まれた。
西郷氏は藤原氏流の肥後(熊本県)菊池氏の分家、増水西郷氏の末裔を名乗っている。
肥後・菊池氏は建武の親政から南北朝並立期にかけて、一貫して後醍醐天皇(南朝方)に与力した有力豪族である。
そう、西郷吉之助は、まさしくあの「菊池千本槍(きくちせんぼんやり)」の血筋を受け継ぐ南朝の影人だったのである。
西郷吉之助は、薩摩藩第十一代藩主・島津斉彬(しまづなりあきら)に見出されて中御小姓・定御供・江戸詰に登用され、お庭方として斉彬(なりあきら)の手足と成って篤姫(あつひめ)の大奥輿入れの実務を担い、大いに顔を売って多くの人脈を得ている。
若き頃の西郷吉之助(隆永/隆盛)は、すこぶる周囲の同僚から評判が悪い男だった。
それと言うのも若き日の隆盛(隆永)は理想が高く、為に役人として要領良く立ち回り私腹を肥やす同僚や上司に批判的だったからだが、信念に基づく大胆な正論の為に煙たい存在と嫌われて居た。
この隆盛(隆永)の周囲に迎合しない信念を持つ辺りが、薩摩藩々主(第十一代)・島津斉彬(しまづなりあきら)や藩重役も隆盛(隆永)を認めるように成り、やがて薩摩藩の若手有志の間で評価され、隆盛(隆永)信奉者が増えてリーダーの一人と目される様になる。
しかし隆盛(隆永)を取り立てた島津斉彬が没すると、大胆な正論は主家・島津家の第十二代藩主・島津忠義(しまづただよし)の父・久光(ひさみつ)の怒りを買い、度々島流しに遭っている。
島津斉彬(しまづなりあきら)に見出され出世の糸口を掴んだ西郷吉之助(隆永)は、しぶといのが身上である。
斉彬(なりあきら)の後を継いだ第十二代藩主・島津茂久(忠義)の実父として最高権力者の島津久光(しまづひさみつ)に何度も遠島(流刑)と言う目に遭いながら、あたかも後醍醐帝の怨念にでも後押しされるかのごとく不死鳥の様によみがえり、薩摩藩をリードして行く。
薩摩藩家老と言う立場で西郷と並ぶ大久保利通(おおくぼとしみち)の活動を支援し、反りの合わない島津久光と西郷吉之助(隆永)の間に入り仲を取り持って西郷の活躍の場を作ったのが小松帯刀(こまつたてわき・清廉/きよかど)で、時流を読んで薩摩藩をリードしたその存在は維新史に欠かせない。
確かに彼に相応の資質が在ったのだろうが、長州藩が、かなり孤軍奮闘した後で薩摩藩が倒幕に加わった事など「あらゆる条件が揃う」と言う見えない幸運にも吉之助(隆永)は恵まれている。
運も実力のうちではあるが、隆永(隆盛)の場合は、さらにその特別な人格が周りを引き付けていた。
本書で西郷隆盛に関して「西郷吉之助・隆永(隆盛/たかもり)」と表記しているには実は大きな意味が在る。
実は維新後、明治政府の担当官が西郷吉之助・隆永の名を父親の名・隆盛(たかもり)と間違えて登記したミスを西郷が咎めずに「ソゲンでヨカゴワス(それで良いです)」として正式に隆盛(たかもり)と名乗るようになったからである。
とにかく西郷は「ソゲンでヨカゴワス(それで良いです)」が口癖で、維新後、明治政府の担当官が西郷吉之助・隆永の名を父親の名・隆盛(たかもり)と間違えて政府参議の登記したのを後で知った時も「ソゲンでヨカゴワス」だった。
鹿児島私学校の職員・生徒が負けると判っている西南戦争(西南の役)を起こした時も「ソゲンでヨカゴワス(それで良いです)」と、頭目を引き受けた。
そんな名前にも生死にも拘らなかった西郷隆盛が、他に何かの目論見が無くて、「征韓論に拘った」とは、とても思えない。
我輩が、西郷隆盛にワクワクする魅力を感じるのは、権力に固執せず、純粋でクールな信念の美学に生きる熱血漢な男達で、この時代に我輩にとって最高に魅力的生き方をしたのがこの男・西郷隆盛である。
坂本龍馬も捨て難い人物だが、西郷の私心を捨てる生き様には少し及ばない。
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西郷隆盛(さいごうたかもり)については第五巻の主要登場人物です。記載項目が多過ぎてブログでは書き切れません。詳しくは皇統と鵺の影人・本編の第五巻~第六巻をお読み下さい。
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