神懸(かみがか)り
当然、巫女が「神懸(かみがか)り」状態に成るには、相応の神が降臨する為の呪詛行為を行ない、神懸(かみがか)り状態を誘導しなければならない。
その最も初期に行なわれ、永く陰陽修験に伝え続けられた呪詛行為の術が、すなわち巫女に過激な舞踏や性交をさせてドーパミンを発生させ、脳内麻薬のベーター・エンドロフィン (β-endorphin) を大量に発生させる事で、巫女がオーガズム・ハイの状態(ラリル状態)に成れば、その巫女の様子から周囲が神の降臨を認め、「神懸(かみがか)り」と成る。
現代に於いても人々に踊り好き祭り好きが多いのも当たり前で、ディスコダンスでも盆踊りでも夜明かし踊ればベータ・エンドロフィン (β-endorphin) が脳内に作用して疲れ心地良いダンシング・ハイの興奮状態を招く。
「神迎え又は神懸かり」に於けるエクスタシー状態(ハイ状態)とは恍惚忘我(こうこつぼうが)の絶頂快感状態で、宗教的儀礼などでは脱魂(だっこん)とも解説される。
その宗教的儀礼に於けるエクスタシー状態の際に体験される神秘的な心境では、しばしば「幻想・予言、仮死状態などの現象を伴う」と、現代科学に於いてもこのジャンルはその存在を認められている。
日本の独自文化と言えば、この国では古来から女神が多いのだが、実を言うとその資格について現代では考えられない条件が在った。
それは性交の儀式を執り行う事である。
大和の国(日本列島)黎明期の女神は、神の言葉を天上から受け取り、御託宣(ごたくせん)として下界の民に伝えるのが役目、つまり巫女(シャーマン)だった。
そこに介在したのが、神事として奉納する性交の儀式である。
そして誓約(うけい)の精神こそ民族和合と言う最大の政(祭り)事であり、シャーマニズムに満ちた神楽舞の真髄なのではないだろうか。
理解して欲しいのは、当時の物差しが現代と違い、子宝を得る事も実りの豊穣を得る事も、同じ命を産み出す神の恵みであり、その作業を神の御前(みまえ)で執り行い奉納してご利益を願い、同時に巫女を通して神の声(御託宣)を聞くのである。
勿論民人も、只、巫女に何か言われても易々とは信じない。
巫女が神懸(かみがか)りに成って初めてその御託宣(ごたくせん)が信用される。
この御託宣(ごたくせん)を得る為のアンテナが、巫女の女体そのもので、オーガズム・ハイ状態(神懸/かみがかり)の神域を巫女が彷徨(さまよ)う事に拠って、天上神の声が聞えて来るのである。
それ故に神事として奉納する性交の儀式が真面目に要求され、思想的違和感は無かったのである。
これも、もう少し掘り下げると、初期黎明期の征服部族長(氏族の長)の神格化に辿り着く。
当初は専門の巫女が居た訳ではない。
征服地の統治を容易にするには、民人が信用する絶対的な逆らえない武力以外の力が必要で、それは天上からの神の声である。
氏族長の神格化を進めるにあたって、氏族長を神と成し、屋敷を神域化して神社とすると同時に、その后妃(ごうひ/妻)を、シャーマン役の女神に任じ御託宣(ごたくせん)の能力を持たせる。
つまり女神は、氏族長の后妃(ごうひ/妻)であり、「氏族長(神)の言葉」を、后妃(ごうひ/妻)に御託宣(ごたくせん)させる茶番劇的な「ペテン・カラクリから始まった」と考えるのが合理的である。
それが段々に様式化されて行き、氏族長の后妃(ごうひ/妻)から性交の儀式を執り行う専門の巫女(シャーマン)に替わる。
その女体のアンテナで御託宣(ごたくせん)を得るオーガズム・ハイ状態(神懸/かみがかり)の神域を、巫女が彷徨(さまよ)う為の儀式が、性交呪詛(せいこうじゅそ)と言う「術(すべ)」と成って陰陽呪術に発展、後に本書で記述する「人身御供伝説」への流れが形成されて行く。
何処までが本気で何処までが方便かはその時代の人々に聞いて見なければ判らないが、五穀豊穣や子孫繁栄の願いを込める名目の呪詛(じゅそ)として、巫女の神前性交行事が神殿で執り行われていた。
尚、この巫女が「神懸かり」になる為の社殿神前性交が基と成り、やがて飛鳥期頃に神社と官人(高級貴族役人)の間で社殿神前に於ける官人接待の習慣が起こり、歌舞・音曲・性交がセットに成った神前娼婦と言う形態が出来上がって遊女の原型と成り、平安末期には白拍子と呼ばれる遊女と繋がって行く。
実はこれらの神話は、多くの多部族・多民族が日が昇る東の外れの大地・日本列島で出遭った事に始まる物語である。
その多部族・多民族が夫々(それぞれ)に部族国家(倭の国々)を造り鼎立していた日本列島を混血に拠って統一し、日本民族が誕生するまでの過程を暗示させているのである。
詳しくは【天狗修験道と犬神・人身御供伝説】に飛ぶ。
◆【類人猿・ボノボ こそ、争いを回避する知恵の原点】
◆【性文化史関係一覧リスト】をご利用下さい。
◆世界に誇るべき、二千年に及ぶ日本の農・魚民の性文化(共生村社会/きょうせいむらしゃかい)の「共生主義」は、地球を救う平和の知恵である。
◆神話で無い、リアルな初期日本人の成り立ちについては、【日本人の祖先は何処から来たのか?】を参照下さい。
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