役小角(えんのおずぬ)
「続日本紀」では、六百九十九(文武天皇三年)に、「賀茂役君小角/かものえのきみおづの」は初め葛木山(かつらぎさん)に住み、呪術をもって称えられたが、弟子の韓国連広足(からくにのむらじひろたり)に、ざん訴され、伊豆島に流された」とある。
伊豆半島には「賀茂郡」と言う土地の名称が、「伊豆の国(いずのくに)」の旧郡として、未だに存在している。
小角の生まれた家の氏は「賀茂役君(かもえのきみ)」と言い、後に京都で賀茂神社を奉る賀茂氏の流れである。
この賀茂氏、元は天皇家に匹敵する臣王家葛城氏の子孫の事で、臣に下った後、「一部が賀茂氏を名乗った」と言われている。
「役(えん)」は、特定の職掌(しょくしょう)をもって宗家・賀茂氏に使えた賀茂氏の分家の氏の名を意味する。
「君(み)」は古代豪族が身分や家柄・職能に応じて用いた姓(かばね)である。
従って、小角(おづぬ)は賀茂氏流れの血筋と言う事になる。
上・下賀茂社の社家・鴨氏は、山城国葛野郡賀茂郷に在住した土豪・鴨県主(かもあがたぬし)の後裔である。
賀茂県主・葛野県主・葛野鴨県主などとも文献に記される。
賀茂氏には、神武大王(じんむおおきみ/初代天皇)の東征に際し熊野路を先導して功績を挙げた」と言う八咫烏(ヤタガラス)の伝説がある。
八咫烏(やたがらす、やたのからす)は日本神話で、神武東征の際、最高の皇祖神タカミムスビ神によって初代・神武大王(じんむおおきみ/初代天皇)の元に遣わされ、「熊野から大和への道案内をした」とされる三本足の鴉である。
我輩が考えるに、建前の中に埋もれてしまったが役小角(えんのおずぬ)とその配下の陰陽修験者(修験導師)が日本史に与えた影響は、計り知れないほど大きい。
この物語でも、「彼らこそ日本史二千年の原点であり、彼らの残したものが主役」と言っても過言でないかも知れない。
この「日本史二千年の原点」が、この物語のあらゆるシーンに顔を出すのも見物の一つである。
修験道の開祖・役小角(えんのおずぬ)が活躍したのは大化の改新の後、天智大王(てんちおおきみ/第三十八代天皇)の御世から天武天皇(てんむてんのう/第四十代)の御世に代わる六百七十年頃で、七百十二年編纂の古事記や七百二十年編纂の日本書紀よりも古い時代の事である。
大海人皇子(おおあまのみこ・天武天皇)には「革命」に成功し、皇統の系図を書き換えて天智天皇の弟に納まり「第四十代天皇を継いだ」と言う「大疑惑」がある。
山岳修験の総本山・金峰山寺(きんぷせんじ)は役行者(えんのぎょうじゃ)が開祖とされる。
小角(おづぬ)が、大海人皇子(おおあまのみこ・天武天皇)が即位したと時を同じくして陰陽修験道を始め、その修験道を組織化して行く所から、この陰陽修験組織成立には天武天皇の意向が存在したのではないだろうか?
役行者(えんのぎょうじゃ)とも称される葛城氏・賀茂小角(かものおずぬ)は、朝廷(大王・おおきみ/天皇)の権威をあまねく列島の隅々まで知らしめる為の武装組織兼布教組織の長官ではないだろうか?
山間僻地に到る民衆まで心服させる為には、役小角(えんのおずぬ)とその配下の神格化が必要だった。
しかし、神になっては大王(おおきみ/天皇)の権威と同格になる。
そこで考え出されたのが、「会得(えとく)」と言う手段である。
難行苦行の末に超人的能力を会得した役行者(えんのぎょうじゃ)が誕生する。
役小角(えんのおずぬ)やその配下の不思議な術は、当時渡来した仏教を通して中華文明の最先端技術を駆使した事である。
今で言う天文学、気象学、医学・薬学(治療術・治療薬から化学反応)、鉱物学(採掘から錬金術)、建築学、機械工学、など多岐にわたる最先端技術である。
これが、無知な民衆には人間業とは思えない奇跡に見え、陰陽修験は恐れられ尊敬される事になる。
この修験道の「密教・山岳信仰」のルーツこそ、中華帝国を経由し仏教と習合して伝わった遥かヒマラヤ山脈の「夜這いの国々のヒンズー教起源」である事は間違いない。
元々弘法大師(こうぼうだいし/空海)が中国から持ち帰った経典を現代の先入観に当て嵌めて真言密教を理解しようとする所に無理がある。
弘法大師(こうぼうだいし/空海)が中国から持ち帰った経典には、ヒンドゥー教の経典も多数含まれていた事から、真言密教が生まれた。
だからこそヒマラヤ原産の桜木も日本に伝わり、吉野に代表する山岳信仰と桜木は日本でも一体のものと成った。
修験道系密教の祖と言われる役小角(えんのおずぬ)については第一巻の主要登場人物です。記載項目が多過ぎてブログでは書き切れません。詳しくは皇統と鵺の影人・本編の第一巻をお読み下さい。
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陰陽師起源の詳しくは、小論【陰陽師=国家諜報機関説】を参照下さい。
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