水戸藩重臣・雑賀(さいが/鈴木)家の謎
水戸光圀の大日本史編纂には、「影の目的があった」のだが、この疑い、果たして世間が言うように「有り得ない事」なのだろうか?
それは、編纂の為の現地調査を名目とした諸国大名家監視体制だった。
活躍したのは、雑賀党当主・鈴木孫三郎重朝(しげとも)と雑賀衆の一団だったのである。
この意表を突いた諸大名制御策、誰かの用意周到な知略の賜物で、段取りも時間も念が入っている。
徳川家康の十一男・徳川頼房が常陸国(茨城県)に入り水戸藩とし、御三家としての水戸家が成立したのだが、実はこの水戸藩、表向きの理由以外に徳川家康の意向に拠り当初から容易ならぬ密命を帯びて設置されていた。
水戸藩は将軍の補佐(副将軍と言う官職は無い)を務める事を任とし、江戸定府(参勤交代なしの江戸在住)であった。
しかし実務は老中・大老などが仕切るので水戸徳川家の「将軍補佐」と言うその権限や役割は、何をするものか明確ではない。
「大日本史」は、徳川頼房(正三位権中納言)の三男、従三位中納言・徳川光圀(みつくに) によって編纂された歴史書である。
神武天皇より後小松天皇まで紀伝体によって述べ、本紀・列伝・志・表からなっている。
歴代皇位から神功(じんぐう)皇后を除き、弘文天皇を加えた他、南朝を正統とした点が「大日本史」の特色で、この編纂作業は、実に明治の中頃まで続いて居る。
水戸家に於ける雑賀の立場は、並の家臣ではない。
雑賀鉄砲衆の鉄砲頭として雑賀孫市の兄弟とも子ともいわれる鈴木孫三郎重朝(しげとも)は、千六百六年になって徳川家康に召抱えられて徳川氏に仕え、後に二代将軍・秀忠の命により、家康の末子・頼房に附属されて水戸藩に移り、水戸藩士・鈴木家となる。
鈴木孫三郎重朝(しげとも)は、幼名を鈴木一蔵と言い、重康の名をさずかった「松平元康(徳川家康)の庶長子ではないか?」と噂される人物である。
それが、三河鈴木家から依頼を受けた安土桃山期・雑賀孫市に育てられ、雑賀党の棟梁に成っていたのである。
この噂が本当なら、「家康の庶長子と知っての水戸家入り」と言う事になる。
水戸藩士・鈴木家は重朝の子の重次の時に、神君・家康の落胤・鈴木孫三郎重朝(鈴木一蔵)の家系が四代目に女児ばかりだったのを契機に、後継ぎとして主君徳川頼房と側室寿光院(藤原氏)の子(光圀とは腹違いの兄弟)を養子に迎えて「鈴木重義」と名乗らせ、「大日本史」編纂作業の始まる頃には、完全に正式な水戸藩親族系家臣の家と成っている。
鈴木家は後に雑賀家を名乗り、水戸藩の重臣として幕末まで続いた。
つまり水戸藩鈴木家(雑賀)は、光圀の「大日本史」編纂事業の裏表に深く関わって不思議は無く、隠密系の武門の家である事から返ってこの符合が納得出来るひとつの方向を暗示していたのである。
水戸藩鈴木家は後に名字を雑賀と改め、代々の当主は「孫市を通称とした」と言う。
徳川家一門の並々ならぬ支援を受け、あの影人の大名跡、「雑賀孫市」を、晴れて復活させてのである。
水戸雑賀(鈴木)家は、表向き水戸藩砲術指南役として天下に名声を博し、けして闇の存在ではないが、実は江戸幕府二百五十年の体制維持に大きく貢献した。
つまり水戸雑賀(鈴木)家は、言わば「幕府系隠密」と言う別の顔を密かに持っていたのである。
この水戸徳川家と雑賀鈴木家の重い経緯に加え、御三家とは言え、水戸三十五万石(実質二十五万石とも言われる)の一藩が手掛けるには余りにも大事業の「大日本史」の編纂とくれば、その目的に表向き以外の幕府公認の「何かが隠されている」と考えざるを得ない。
架空(フィクション)の物語「水戸黄門漫遊記」であるが、忍びの術者が暗躍した部分は、案外本当かも知れないのである。
それにしてもこの「大日本史」の尊王思想が、遥か二百数十年後、明治維新の尊王派(勤皇の志士)に少なからぬ影響を与える所が、歴史の面白い所である。
江戸幕府において水戸藩主は御三家の内、唯一江戸定府(常駐)の将軍補佐役(注、副将軍と言う役職は正式には無い)と言う特殊な立場である。
そして幕府・幕閣に於いては老中職(特設・大老職有り)などの協議を将軍が裁可するので、水戸藩主・江戸定府(常駐)の職務上の真の役割が判らない。
しかも「近代兵器である鉄砲・大砲の扱いと諜報能力に優れていた」とする雑賀党を召抱えの上、更に藩主の異母弟を婿に入れて雑賀党の統領に据えている。
ヒヨットすると公には出来ないが、水戸藩主は幕府の影の部分を受け持ち、大日本史編纂の為の水戸藩・歴史調査使(役)と称する派遣要員は、日本版CIA、KGB・・「裏陰陽寮の再現」の大名領内派遣の口実なのかも知れない。
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詳しくは【水戸徳川家異聞】を参照。
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未来狂冗談のもうひとつの政治評論ブログ「あー頭にくる」<=このブログのランキング順位確認できます。by mmcjiyodan | 2008-09-25 01:47